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〈8〉



その夜。
越田から電話があった。
「御堂、僕だ、越田だ」
越田の声を聞いて、背筋に逆立つものがあった。
それほど今の僕にとって越田は異様な存在になっているのだ。
「越田っ! どうしたっ! 今どこにいる?!」
「お前を信用しない訳じゃないけど、居場所は言えない。 指名手配されてんだろ?」
「ああ、だけど、たんなる傷害だからな、罪は軽い」
「いや、これが捕まったら殺人未遂なんて罪名が付くもんなんだぜ」
「そんなもんかね。 それより、お前、あの力は何だ? どうしてあんな力が出せたん
 だ?」
「それな……ちょっといろいろあってな」
「ちょっといろいろで済む力か。 薬か何か飲んであの力が出るのか? それとも何か
 の手術でもしたのか?」
「今は言えん。 けど、その事に関してなんだが、お前に会いたいんだ。 話がしたい
 し、見てもらいたいものがある」
「何だ?」
「会って話したい」
望ところだ。
今すぐにでも会いに行く。
「明日の午後五時。 旧講堂のロフトに来てくれ。 駐車場になっているところ」
「あんなところに? 人目につくぞ」
「大丈夫だ。 その時間なら案外誰もいない。 ひとりで来てくれ」
「判った」
「それじゃ」
「待て。 刑事がかぎまわってる。 気を付けろ」
「ああ」
手短に切れてしまった。
淡々とした喋り方だった。
追われているとか、逃げ回っているとかの緊迫感や悲壮感は無かった。
絶対安全だっていうくらいの落ち着きがあった。
ひとりでおどおどと隠れているという感じじゃなかった。
保存派の連中に組織的に匿われているのだろうか?
僕に話したい事って何だ?
集会の時もそうだった。
傍観組だった僕をわざわざ呼び出し、自分の力を見せた。
まるで僕に何かを見せて、何かをさせようとしていたかのように。
とにかく会ってみたい。。
聞きたい事は山ほどある。


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憂想堂
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