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〈11〉



ところで、僕と宣子の関係はいったいどうなっているんだろう?
宣子には確か、現在つき合っている彼氏がいると思っていたのだが、いっこうにそちらと
日常の行動を共にしている様子は無いし、口にも出さない。
あえて僕も聞かない訳だけど、それを良い事に、宣子と僕はいつも手をつなぎあっている。
僕としては、以前から気になっていた女の子なんだから悪い気はしないし、もしかして、
このままなし崩しに宣子を僕の手中に、なんて思ったりもする。
けど、宣子がその点をどう思っているのかが判らない。

浦賀刑事と別れた後、僕は宣子を家まで送って行き、家の前で、ちょうど人通りも無かっ
たし暗かったものだから、これは優しく抱き寄せて、お休みのキスぐらいと思って、つな
いでいる手に力を入れたとたん、宣子はするりと身をかわし、
「ありがとう、お休みっ」
と言って、何の愛想も無しに玄関をくぐって行った。
僕としては、懐に飛び込んで来た小鳥をつかもうとした途端に逃げられたようなもので、
なんだか残念な気分になった。

そして、暗い夜道をひとりで歩いて帰った訳なんだけど、何ていうか、今までに感じた事
の無い、胸の痛さを感じていた。
この先、宣子とどうなるんだろう?
いや、どうすればいいんだろう?
疑問符ばかりが湧き起こる。
具体的な答えは何も出ないまま、僕はただ、とぼとぼと歩き続けた。


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憂想堂
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